ウツシカガミ
俺の名前は『麻月 姫』。性別は一応女。
「名前と言動のギャップが激しい」とか「大人しくしてればお姫様みたい」だとか、よく仲間にからかわれる。
ま、俺は気にしてないけど。
でも見た目だけはマジでイケてるんだぜ?
金髪碧眼の美人、ってとこかな。
あ、ちなみに生まれつきね。俺ってばハーフだから。
ん?クォーターになるのか?まぁ、どっちでもいいけど。
ちなみに母さんが外国人。ものすごく綺麗なんだ。
俺は母さんに似て美人。父さんとはまったくと言ってイイほど本気で似てない。
でも、二人とも好きなんだ。ってこれが当たり前だと思ってるけど。
あ、自分のことも言わねーと。
俺はとにかく口より先に手をだす野蛮人。口も一応達者。言い方が悪いけど。
あ、これでも昔は一人称が『あたし』で、もっと女の子らしかったんだ。
確か両親が死んでから荒れたのかな?
仲間はみんな族入りしてる奴ばっかり。俺はあんなとこ入る気ねぇけど。
学校は毎日しっかり通ってる。授業もサボらない。提出物も出す。けっこーエラくね?
ちなみに頭の良さは学年トップ。
テストの成績はほぼ毎回、ほとんどの教科でほぼ満点かな。
自分でも頭は良いと思ってる。
あれ?俺って自分の年齢言った?
17歳、高校2年。うん。今言った。
あとは…仲間?学校に友達はいない。みんな俺のこと怖がってるし。別にいーけど。
あぁ、3年のガラの悪い連中によくからまれるな。その時は相手を殴って蹴る。一件落着。
よくはないと思うけど、これしか方法がないんだよなー
勉強して、ケンカして。
毎日これの繰り返し。
クソつまんねー日常の繰り返し。
でも、何かが違うんだ。
どこかでボタンを掛け間違えたような。
どこが違う?
何を忘れた?
…でも、それでもよかったんだ。
こんなんでも生きていけた。
一人でも進んでいけた。
だから、もうどうでもよかった。
…ハズだった。
あの、忘れる事のできない出来事さえなければ…
その出来事の始まりは、ある夏の、8月の終わり頃だった。
「あっづー…なんでこんなに暑いんだ…」
愚痴を呟きながら、家の鍵をかけた。
家には誰も、居ない。
俺の家から学校までの距離。徒歩1分。…とにかく近い。
でも、そのたった1分の違いが、俺の運命を変えてしまった。
「あれ?仔猫じゃん。おーい、そんなとこにいたら車にひかれるぞー」
そう、猫だ。小さな猫が道路のど真ん中の、白いラインの上に座っていた。
どうにも動きそうにない。と言うより動けないのだろう。
…案外、日向ぼっこしてるだけだったり…する訳ないわな。こんな暑い日に。
「ま、とりあえず助けてやっか」
動物は結構好きな方だし。
俺は猫にむかって歩き始めた。
ちょうどその時、大型トレーラーがこっちにむかってやってきた。
「わぁ、でけートラックが来た…じゃなくて!あのままじゃひかれるって!!」
しかも、なんてこった。猫がトラックに向かって歩き始めたではないか。
「ギャーっっ!!ちょっ、待てって、あぁ、もう!!」
俺は走った。
兎に角走った。
猫まで1m。
猫まで50cm。
「よしっ捕まえ…」
俺の目の前は真っ暗になった。