999番キリリク小説です。

束ミツカ様のみお持ち帰りいただけます。

 

 

 

 

 

明るい陽射しの舞う中、少女が歩いていた。

その少女――桜の足取りは軽く、服装もいつもに比べ、お洒落だ。

昔の暗い姿とは程遠い。

しばらくして、その足は止まった。

とあるアパートの部屋の前で。

桜は家のチャイムに手を伸ばした。

ピンポーン

少しして、誰かがインターホンに出る音がした。

「はいはい、どちらサマですか〜?」

「あたし」

問い掛けに素っ気なく答えるが、相手はわかったようで、ちょっと待って下さいネ、と返ってきた。

通信はそこで切れたが、玄関の扉があいた。

そこにいたのは髪を三つ編んでいる男性だった。

「いらっしゃい、桜サン」

男性の名前は秋宮鴇。

桜とは仲がよさそうだ。

「上がって待ってて下さいネ。紅呼んで来ますカラ」

そう言って鴇は家へ入った。

桜も後に続く。

部屋の中は整っていて、窓からは温かい陽の光が射し込んでいる。

桜が窓の外を眺めていると、後ろで足音と、げっ、と言う声が聞こえた。

振り返ると、そこには秋宮紅がとてつもなく嫌そうな表情をして立っていた。

「…何でお前が此処に居るんだ?」

「それ、幾度か聞いた台詞ね」

桜は今までにも、何度か秋宮家に足を運んでいた。

その度に同じ問答が繰り返される。

それを鴇は花と電波を飛ばしながら見ていた。

桜が紅から目を離して溜め息をつく。

「それに、此処を教えたのは紅じゃない」

「あれはてめぇが脅したんだろ」

感情を露にする紅とは逆に、桜は落ち着いている。

鴇が紅の肩をぽん、と叩く。

「まあまあ。毎回同じじゃ疲れますヨ」

いつもこの調子だ。

紅は仕方なさそうに盛大な溜め息をついて、ソファーに座った。

「…で、今日は何だ?」

「買い物に付き合いなさい」

なんの躊躇もなく、命令系を使う。

「断る」

紅も構わず、きっぱりと断った。

それを見た桜はしばらく口を閉ざす。

そして、次に口から出た言葉。

「…蘇芳に言おうかなー…いろいろと」

それを聞いた瞬間、紅の顔色が悪くなった。

「やめろ、言うな」「じゃあ付き合ってくれるわね?」

「…好きにしろ」

そう言って、先程以上の溜め息をついた。

うなだれている紅に、さっさと用意しなさいと言い、桜は紅を部屋に連れていく。

部屋の構造まで把握しているようだ。

 

しばらくして、桜が紅を連れて帰ってきた。

「じゃあ、鴇。紅借りて行くわね」

「ハイ、行ってらっしゃい」

自分の弟が連れて行かれるというのに、兄は笑顔で見送った。

二人が出ていき、部屋には静寂が訪れる。

「…紅も、いい加減分かればイイんですけどネー」

そう言って、鴇はため息をついた。

 

――桜サンには一生敵わないというコトを…――

 

「…で、何処に行くんだ?」

とても嫌そうな顔をして聞く。

聞かれた桜は少し考える。

「紅はお昼もう済んだの?」

「あぁ。…まだなのか?」

「父さんも氷狩ちゃんも仕事。何か作ろうと思ったけど、何もなかったのよ」

お腹空いたわ、とお腹を摩って言い、紅を見上げる。

「付き合いなさい、何か奢るから」

 

二人はある和食店に入り、桜は注文した。

デザートもしっかり忘れずに。

注文品が来た時、紅は少し目を疑った。

「…んなに食えんのかよ」

注文した物は普通の物より量が多い様な気がするするのだ。

加えてデザートもある。

「食べれなきゃ頼まないわよ。紅も何か頼みなさい」

「…奢られる理由がねぇ」

桜は、いただきます、と手を合わせ、箸を取る。

「大ありよ。今日一日付き合って貰うもの。その前払いよ」

そう言って紅にメニューを渡して、目の前の物を片付け始める。

「…おい」

「いいから頼みなさい」

普通の男子ならイチコロの綺麗な笑顔だが、紅からすると、どう見ても脅迫に近い。

仕方なく紅はメニューを眺め、桜をちらと見て注文した。

 

 

店を出た後に向かったのは、近くにあった大きなデパートだった。

まず初めに服を見に行った。

大きなデパートなだけあって、店の一つ一つが広い。

「紅、男の人って誕生日プレゼントにどんなものが欲しいのかしら?」

突然の質問に少し驚くも、返事を返す。

「人によって違うだろ」

「そうなのよ。で、相手は父さんだから視てみたんだけど…」

桜はそこで言葉を区切る。

そして言いにくそうに呟く。

「…桜の愛が欲しい、なんて視えたらどうしていいかわからなくてね…」

それを聞いた紅は表情を歪めた。

言葉が見付からない。

なんという親馬鹿なのだろう。 一度親の顔が見てみたいものだとすら思えた。

「…それは…なんとも言えねぇな…」

「だから、紅に聞こうと思って誘ったのよ」

「…流石に俺もわかんねぇよ」

そこで二人会話が途切れた。

そんな時だった。

「…あ」

桜が何かを見つけた。

紅もその先を見ると、向こうもこちらに気付いた。

「如月に幻音じゃない。デート?」

そこにいたのは狩野如月と和束幻音だった。

如月は少し唸ったが、幻音は駆け足でこちらへ来る。

肩より少し長い髪が上下に揺れた。

「…桜さんこそ、彼氏いるのに…?不倫…?」

それを聞いた紅が言い返そうとするが、桜はそれを笑顔で止める。

「おい、邪魔しに来たんじゃないだろうな」

後から遅れて来た如月が桜に問う。

幻音との幸福な時間を取られて、少しいらついているようだ。

「まさか、たまたまよ。あ、これ、永月の秋宮紅」

これ発言に再び反論しようとするが、やはり桜に止められる。

「永月…って、年上だろ。いいのか?」

「よくね…っ」

「いいの。ところで、二人は何処に行くつもり?」

やはり桜に止められたので、とうとう諦めたらしい。

紅はため息をつき、如月の方へ行った。 如月が紅に声をかけている。

何処に行くのか、幻音は顔を赤らめながら、桜に耳打ちする。

それを聞いて、桜の顔には笑みが広がった。

「行きましょう。男共を連れてね」

「え、でも…」

「如月は別として、紅は連れて行きたいわ」

その時の桜の笑顔は、天使の様な悪魔の笑顔だった。

 

着いた場所は、女性用下着店。如月も少しバツの悪そうな顔をしている。

紅はというと…

「逃げないの、子供じゃないんだから」

「こんな店、嫌に決まってんだろっ!」

全速力で逃げようとしていた。

しかし、桜は紅の服を掴み、離さない。

「別にただ居るだけじゃない。疚しい事してる訳じゃないんだから」

「男をこんな店に連れてくる事自体おかしいだろうがっ」

その後も反論するも、もはや無理だとわかったのか、抵抗する事は諦めたようだ。

だが桜は離さない。

「へぇ…恥ずかしいんだ、青いね」

「殺るぞ、てめぇ…」

そんな中、桜さん、と幻音の呼ぶ声が聞こえ、桜は振り返った。

「そろそろ、可哀相なんじゃ…」

「そう?…まぁ、あたしも買い物あるし、そろそろ行くわ」

そう言って、桜は紅の服を引っ張っていく。

「やっとかよ」

如月はそう呟いた。

心の中では、ご愁傷様、と…

 

 

その後、桜たちは、服や靴、アクセサリーなどを見てまわった。

紅の顔はそんなに元気なものではなかったが、最初程嫌そうなものではなかった。

 

 

 

 

―夕方―

桜たちは、秋宮家に帰ってきた。

「今日はありがとうね」

「…もう二度と付き合わねぇ」

紅はぐったりとしていた。

澱んだ空気が紅を取り巻く。 だが、これもいつもの事だ。なんだかんだ言いつつ、付き合ってくれる。そんなところを桜は買っているのだ。

「また何か御礼でもするわよ」

「…お前が言うと、なにか裏がありそうだな」

あら、嫌な奴、と桜は澄ました顔で返す。

「あたしだって人間よ。普通にね」

桜の顔には、少し寂しげな笑顔があった。

紅は桜から目を逸らす。 桜と顔が合わせられなくなり、気まずくなった。そして、話題を変えようと焦って話し出す。

「…で、結局何を買ったんだ?」

「あぁ…スーツよ。父さんに似合う真っ白のね。あとは…ケーキの材料かしら」

「…作るのか?お前が?」

「勿論よ」

紅は少し驚いた。

―なんでこいつ、こんなに完璧なんだ…?―

「また今度お前たちにも何か作って持って行くわ。永月にね」

「…永月に?」

「そうよ。双子たちやお前の友達にもね。独り占めは駄目よ?」

「誰がするか」

それを聞いた桜は少し淋しそうな顔をした。

…ほんの一瞬。

「じゃあね」

「あぁ。もう来るなよ」

その台詞に桜は少し考えるそぶりを見せて、言った。

「…それは無理ね」

   

 

 

はい。醜い小説すみませんでした。
もっと文才が欲しい…
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